
人的資本への集中投資で圧倒的な競争優位を確立しよう
企業規模に関わらず、経営資本には以下の6つがある。
①財務資本(企業の活動を支える財源や投資資金)
②人的資本(従業員のスキル、知識、経験)
③知的資本(特許やノウハウ、ブランド価値などの無形資産)
④物的資本(設備、建物、技術的インフラ)
⑤自然資本(自然環境から得られる資源やエコシステム)
⑥社会関係資本(顧客、パートナー、地域社会との信頼関係)
ただし、中堅中小企業は、大手上場企業と比べるとそれぞれが圧倒的に低位で不足しがちである。とは言え、企業間競争は待ったなしで大手も中小も関係なく、常に勝つか負けるかという厳しい選択を迫られている。
そこで改めて考えたいのは、この中の「人的資本」だ。というのも全ての資本を生みだす源泉でもあり、従業員一人当たりで考えるとそれほど大差ない水準にまで高めることは可能と思うからである。わずかながらの資本しかない中堅中小企業こそ、それらを徹底して人(一人当たり教育コストや時間、ダイバーシティなどの人を育む環境づくり)へ集中的に投資することで人的資本価値を高め、その価値提供を通じて業績(企業価値)を向上させ、最終的に人へと付加価値配分(フィードバック)される。これらの善循環を通じて企業経営の原動力たる高いエンゲージメントが継続的に形成されることだろう。ちなみに人への投資とは、育つ・育てる・育むの3ステップにある。
そして強化された人的資本で特に威力を発揮したいのは、「顧客の満足を超え感動レベルにまでに磨き抜かれた経営(仕事)の基本力」と「他社を圧倒する施策展開の速さ、スピード力」である。
まずはその基本力だが、長きにわたって先代から受け継がれてきた経営や仕事の基本や優れたフレームワークは既に揃っている。それを単なる知識と思い、現実の経営で充分に使いこなせていないのか、もしくは構想の域に留まり実践レベルにまで落とし込めていないのか。基本(ベース)が弱い会社にありがちな症状は、経営の上位で言えば、「企業ビジョンや理念が社員に浸透されていない」「経営方針や目標に対する意識が希薄である」。また、下位で言えば、「約束が守られない(行動計画の期限、資料の提出期限、顧客との約束等々)」など様々で多岐に亘る。ただこれらの点は企業規模に変わりがないことが多く、つまりは基本力を極めることで大手企業にも優位に立てるということになる。基本が出来ていないからロスが多い、顧客から評価されない、そして企業360万社の中に(取るに足らない普通の会社として)埋没していく。
もう一つは施策展開のスピード力。他社が半年でやることをわが社は3か月でやり遂げる、他社が3か月でやることを我社は1か月でやり遂げる。そのためには、経営の意思決定から施策の展開までのプロセス設計と人と組織の生産性が鍵を握る。他社を圧倒するこのスピード基準は、企業に先行利益はもちろんのこと、他社がとてもついていけないという諦めに近い差異を発揮するだろう。
本来、人の能力にそこまでの大差はないはずだ。あるとすればその能力を常に磨き続けているかどうか、活かしきれているかどうか、仕事のパラメーターである時間の使い方に敏感か鈍感かどうかの違いだ。人的資本経営の成否は、個人と組織の生産性が決する、私はそう確信している。さあ、人的資本への集中投資で圧倒的な競争優位を確立しようではないか。
