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見るべき視点を創り、見える化し、皆で活用

メーカー時代、原価管理を担当していた私は、上司や先輩方々から「デスクワークも大大事だが、工場現場は必ず1日1回は行くこと」と指導を受けた。以来、私は現場第一主義のひとつとしてそれを日課にした。しかしながら現場から帰ってきた私に上司が「現場はどうだった?」、私「特に何も(問題は)ありませんでした」、上司「そうか」、それで終わっていた。私は、何もないということは課題発見力がなく恥ずかしいことだ。もっとよい報告、価値のある報告をしたい、そう思うようになった。しかしながら今の時代と違って懇切丁寧に教えて頂いたり、マニュアルやeラーニングなどといった便利なものはほぼ整備されてなく、当時は全て自分で工夫しながら学ぶしかなかった。

この時、強く思ったのは「常に目的意識と併せて見るべき視点を持とう」ということだった。工場現場巡回においても然り。問題がないのではなく、的確な見るべき視点を持ち合わせていなかっただけのこと。どこをどのように見て回るのか。その視点がなくては単なる散歩だ。

まず考えたのが悪さはどこに出るか、それは作りすぎの無駄である在庫であり、規格通りにものづくりが出来なかった不良品だ。そこで必ずみるべき場所として「原材料倉庫、不良品置き場」を入れた。目で見た在庫量の多少、そして帳簿在庫と(実在庫)の比較。これでムダはもちろん、期末の棚卸差異も適時に予防できる。不良品の多少、その症状はどうか。そこから現状の歩留まりの実態、裏付けが理解できた。そしてこれらを視点としてチェックリストにまとめ、以後は漏れなく無駄なく巡回できるようになった。改善につながる問題点も数多く見つけることができた。

後に作成したのが少し凝りすぎだが、2つの視点をマトリクス化したMMチェックリストだった。モノづくりの5つの要素である5M(MAN、MACHINE、MATERIAL、METHOD、MORALE)に改善の3M(ムダ、ムラ、ムリ)を組み合わせた。月1回もう少し細かく工場を見て回る時にはこちらを視点として活用し、月間原価レポートのひとつにした。

人的資本経営における指導のあり方は、単なる指示やアドバイスではなく、このような視点からとらえ、それを分かりやすく丁寧に説明していくことではないだろうか。少し甘いかも知れないが早期戦力化のためには優先すべき考え方のように思える。

保木本 正典

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