グローバル競争時代、コスト競争力が鍵を握る時代である。ここでいうコストは売上原価だけでなく販売費・一般管理費も含めた総原価を指す。この総原価、つまりトータルコストの引き下げを推進する上で外してならないことは源流(工程)をおさえることである。
(1)例えば、建設業や製造業等では、それは設計部門かも知れない。設計部門がどの程度、コストを考えて設計しているかである。実際、残業続きで納期に追われていることが多い。まずは、設計部門の生産性向上により、コストを最重要視して設計するくらいの余裕を持たせる必要がある。設計は、製品の機能等の品質、そして納期をクリアーして50点、試作段階での原価を引き下げて100点である。
(2)ある建設会社でも設計がネックだった。納期に追われながら毎日残業、万年工数不足。ここでも原価よりも納期が優先されていた。そこで設計部門の生産性向上に取り組むことになった。基本的に、①営業とのコミュニケーション不足(顧客要求事項のツメの徹底)、②設計能力不足(スキルの棚卸を行い、不足点を重点的に指導。若手は標準品、類似品など役割分担の見直し、上司は担当から外し部下の業務を頻繁にチェックし適時修正)、③生産性が低い(価格表や過去の設計図書の整備などの設計ツールの充実化)
(3)ある食品メーカーでは営業部門が源流だった。多品種少量生産は世の中の流れとも言えるのだが、そうなっているのは営業マンの交渉力の無さが原因ということも少なくない。実際、百貨店の言うままに製造することでアイテムが増加し、工程が混乱していた。そこでアイテムカットで絞込みがまず必要ではないかということになった。後工程の生産性の鍵を握るのは、営業マンによる顧客要求事項の見極め、交渉力なのである。特注価格を明確に示し、安易に汎用品価格で応じない。このようにトータルコストダウンは、通常のコストダウンと違い、コストダウンという目的に対し、手段の対象が生産部門だけに留まらない。営業(提案)力の強化ということもある。トータルコストダウンの対象は経営全てなのである。
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