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社員の声に耳を傾けその期待に応える、これこそが最強の業績対策

最近、よく目にする言葉の一つに「エンゲージメント」がある、本来の意味は、契約や約束・誓約であるが、ビジネスの世界では、会社に対する従業員の愛着や貢献、もしくは会社と従業員との深い結びつきを表現している。そしてそれは、かつてのように業績を支えるための好ましい企業風土の醸成といった視点からではなく、人的資本改革時代故、エンゲージそのものが会社の売上や利益の向上に直結するなどとその位置づけも変化してきている。

そこで上場企業はじめ数多くの企業が競うように定期的にエンゲージメントの実態をアンケート形式で測定を行い、改善に努めるようになってきており、このこと自体は大変好ましいことと思う。ただ課題も多く、毎期測定しながらその定量的なスコアに一喜一憂するだけに終始している企業も未だ多いように感じる。立派なMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を掲げるものの、実態は社員が実践どころか趣旨さえも理解していないなどと言ったパーパスウォッシュ同様、このエンゲージメントにおいても測定だけの自己満足にとどまっている企業が多いように見受けられる。

当然ながら大事なのは、具体的なアクションと継続的改善。例えば、誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、子育てや介護の時間、家庭や地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持ち、健康で豊かな生活ができるワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)。しかしながらその中でも鍵を握る女性活躍においてもやたら目につくのは女性社員の採用、女性の管理職への登用といった表面的な指標が未だ多い。一体、ここに本質はあるのだろうか。

真の女性活躍とは、女性を持ち上げることではなく、女性が仕事と家庭において(身体的なことは別として)男性と同等の条件で働け、評価・処遇されていく、そのための会社の制度や職場風土の整備にあるのではないだろうか。制度であれば日常における臨機応変なテレワーク、職場風土であればお子さんが熱を出したら職場の人に気兼ねなく休めることは出来る等々。出産育児で昇進昇格にハンデがないように休暇中でも会社や職場の状況がわかるように情報共有の仕組がある、変わりゆく時代に適応できるようにオンラインやeラーニング教育などが受けられる。それらがあれば優秀な女性は多く、自然と実力を発揮できるはずだ。

ところでエンゲージメント調査には定量と定性がある。主に定量は選択式の評価であり、スコアと呼ばれるもの。一方で記述式の自由回答があり、スコアが結果(会社に対する評価)で自由回答は原因(切実なる声)の関係にある。ぜひとも人事部などの主管部門は大変だが、このひとつひとつの声に耳を傾け、誠実にフィードバックしていって頂きたい。でなければ次回の調査以降は回答しても期待できないと会社に見切りをつけて去っていくか、淡々と義務的に答えるだけで本音を話さなくなる社員が増えていくことだろう。そのような会社が活力ある組織、業績の向上、継続的な成長を実現するとは到底思えないのである。

もちろん全ての声を採用することは出来ない、トレードオフのテーマもかなり多い。しかしながらその声に応えることが出来る、出来ない、出来ない場合はその理由も含めてきちんとフィードバックしてあげることがお互いの信頼につながる。人的資本経営を推進していくにあたり、この建前ではない本音のコミュニケーションが今後もサステナブル経営において大きな鍵を握りそうだ。

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